夕焼け
気がついたら土曜日を迎えていた。そんな1週間だったよ。正しくは、仕事のやることリスト的なものを珍しく書き出してみたら、どれもやる気が出なくなっちゃって、ダラダラ過ごす自分的には毎度おなじみの期間だね。忙しくなりそうになるほどサボりたくなるやつあるよね。そこまでが週の前半。
それからは、もう今週はダラダラ過ごそうと謎の域に入って、そこからひたすら映画を見たりお酒を飲んだり自堕落に過ごしてたよ。つまり何かをしていたわけではなくて、何もしてなかったってことだね。焼肉を食べに行ったよ。少なからず君のカタカナ攻めのタレちょんちょんが効いてるよね、潜在的に。今週末は台風なんともないといいけど、風が強くなってきたよ。夢のマイホーム、しっかりと守ってね。
君の休日話いいよね。僕の思い出の場所ってどこかなーって考えてたら、やっぱり実家の前の公民館を思い出したね。君とタバコを吸いながら語り合ったりね。あの公民館には中学生とか高校生とか、あまり記憶はないけど小学生とかもっと小さい頃からいたのかも知れない。ただ記憶とともにあるのは缶コーヒーとタバコなんだよね。あそこで、僕はこんな風になりたい、こんな事をしたい、こんな仕事をしたい、とか色々語ったなーと思うんだよ。手前味噌だけど(どういう意味か不確かなまま進むけど)その当時、思い描いたことは割と実現してきたと思うんだよ。叶えられずに忘れてることももちろんあるだろうけど。たまたまその公民館が大規模な修繕工事に入るんだよね。お世話になった場所がきっと形を変えるんだけど、またそんな場所ができればいいなと思うよね。君と寒い夜にコーヒー片手に語り合う時間が好きだったよ。
この前の土曜日はね、結婚して東京へ行く子のお祝いでね。ちょうどその日のお昼に両家の顔合わせだったみたいで、スーツで登場してね。式はしないみたいだから、プチお祝いをしてきたよ。言うてもいつもの居酒屋だけどね。それで飲んで話をしたりして、さてそろそろ、みたいな時間にその主役がキャバクラ行きたいって言い出したんだよね。いつもは僕は先に帰って、残りのみんなで行くみたいな流れなんだけど、その日はお祝いだし、終電まで付き合うかと思って行ったんだよね。なんか家族サービスからのナンパ的なコントラストを思い出したよね。両家顔合わせからのキャバクラ的なね。
そんな事より君が気になってるのはキャバクラの話だよね。ちなみに僕の横についてくれた子は、顔は程々なんだけどおっぱいがボリューミーでね。僕たちの席に来て座った途端、あのメガネの子が「めっちゃ乳でかいやーん!」って言うんだよね。その瞬間に僕は見失ったね。あ、そんな感じ?みたいな。ここにはセクハラもパワハラもきっとない。あるのはハラハラだけだ。いや、ムラムラか?その巨乳が僕を見つめてこう言う。「めっちゃ背大きくない?」僕は答える。「背?普通やで」「うそー、めっちゃ大きい思うけど。わかるもん」「背は普通やって。それよりこっちやろ」僕は股間を指差す。「ちょっと」嬢は少し照れたように顔を赤らめる。僕はボーイに目をやる。ボーイは見ていない。その瞬間、僕は股間に嬢の手を伸ばす。「どう?これが東京タワーや」嬢は思わず吹き出してこう言う。「東京タワーって」嬢の指が股間に優しく触れる。「待て待て、スカイツリーにする気か」「えー、スカイツリーになるん?」「なる、かも?」「へー、どうしたら?」僕は再びボーイを確認する。ボーイは見ていない。嬢は僕の股間の登頂に向かって指を歩かせる。「あ、ちょっと待って」「ん?どうしたん?スカイツリーにしたらあかん?」「・・・これってプラス料金とかされへんの?」「大丈夫。私のお・も・て・な・し」嬢は耳元で囁く。「わおセクシー進次郎」僕は嬢の手を引いてトイレへ向かう。
って事はなくて「めっちゃ背大きくない?」「そう?」「めっちゃ大きい思うけど。わかるもん」「へー」ってな感じのセクシー進次郎でした。初対面でもう2度と会わへんであろう奴と喋る意味!ほんま最高やで。主人公の彼はあーゆう場ではとても喋ってて、僕はやっぱり戸惑いを隠せないのであった。自分にある童貞魂。簡単に手放してなるものか!とか思いながら、終電やから先出るわ頑張ってな!と口数少なく去っていく僕の後ろ姿はこの上なくダサかったんだろうなとか思って、帰りの電車で「めっちゃ背大きくない?」からのシミュレーションをしてたよ。やっぱり俺はナンパの方が好きやな。またいこな。
とにかく、あの女好きの新婚さんは普通に就職して働くわと言い残して旅立って行ったとさ。自分で作るのもやめちゃう感じでね。自分で何かをするってむずかしいんだなと思ったよ。そんな今日は夕焼けが綺麗だったよ。